CrowdWorks Designer Blog | クラウドワークス デザイナーブログ

クラウドワークスのデザイナーが書くブログ。深いような、そうでもないような知識、体験、考察をお届けします。

台風被害で感じた情報デザインの難しさをデザイン思考を通してアウトプットしてみたお話。

f:id:yuka_h:20191016125839j:plain


はじめまして。

デザインDiv コミュニケーショングループでデザイナーをしているYUCCA(@YUCCA_WIWI)と申します。

先日の台風19号では、広範囲に甚大な被害をもたらしましたが、皆さんの地域はご無事だったでしょうか。被災に遭われた地域の方々には心よりお見舞いを申し上げると共に一日でも早い復旧をお祈りしています。

私自身も氾濫情報が上がった多摩川の目の前に住んでいたので、危うく被害を被るところでしたが、幸いに家の前の多摩川の水位は堤防を越水せずに済みました。

しかし、台風から一夜明け報道されている被害の大きさに、もしあの水位が越水していたらと想像したら他人事とは思えず今後大きな水害が来た時に備えて、自分に何か出来ないだろうかと連休中考えていました。

台風翌日の多摩川河川敷の写真1 台風翌日の多摩川河川敷の写真2
台風翌日の多摩川河川敷の様子。越水まで、あと階段5段分でした。

 

今回の水害で、私自身や周囲が困っていた、不安に感じた課題をデザイナーとして解決出来ないかなと思ったので詳細を書いていこうと思います。

 

 

水害時に困ったこと

1.緊急速報文章の本当の意味を知らなかった。

実際に自身が感じた体験から振り返ってみて、一番不安を感じた場面は警戒レベル4時に届いた避難勧告文章の解釈でした。
緊急速報で届いた文章はこのような内容でした。

警戒レベル4時に届いた実際の画面

警戒レベル4時に届いた実際の画面

1630分、多摩川流域の対象地域に洪水に関する警戒レベル4(避難勧告)を発令しました。

多摩川が氾濫するおそれのある水位に到達しました。避難対象地域にお住まいの方は、直ちに全員避難を開始してください。強固な建物や避難対象地域外にお住まいの方は、ご自宅の上階に速やかに避難してください。

ん?「直ちに全員避難」とは?
・避難対象地域内の人は、全員避難場所に避難したほうが良いの?
・避難対象地域内でも強固な建物に住んでいたら、避難場所に行かなくても大丈夫なの?


私達は家族3人暮らしなのですが、8階に住んでいるのでわざわざ下に降りて移動するのはリスクだと感じていました。
また、指定された避難場所は地域の住民が全員入るキャパの避難所ではないなと感じてましたし、実際にTwitterで情報収集していると、入りきれずに違う場所へ案内されたとの情報もありました。
結局は自分自身の判断になるのだけれど、情報が少ない中で命に関わる決断するという事はとても心理的に不安な事だったし、決断するまでに避難勧告が来てから1時間くらいかかったように思います。

幸い、解釈内容を専門家が書いた記事を見つける事ができ、レベル4の避難勧告「直ちに全員避難」の意味を知ることが出来ました。
因みに緊急速報で届いた「避難」という言葉には、「指定緊急避難場所への立退き避難、近隣の安全な場所(近隣のより安全な場所・建物等)への立退き避難、屋内安全確保(その時点に居る建物内において、より安全な部屋等への移動)」の3つの避難行動の意味があるようです。(知らなかった....)

2.自らの判断で行動するためには、情報収集が必要だけど時間がかかる。

そもそも限られた時間の中で自身が行動判断するにはある程度の情報が必要です。
例えば、あなたがまったく知らない土地勘の場所で1時間だけお昼ごはんを食べたい。とします。
限られた1時間という中でお店を探して食べなくてはいけないので、ある程度の情報を収集するかと思います。
ちょっと前に歩いていた道に定食屋さんがあったな。とか、スマホの地図アプリや口コミサイトでお店を探してみたり。はたまた近くの人に聞いてみたり。
と、情報収集の方法は一つではありません。

ただ一つ言えるのは、一人で探す情報と誰かと探す情報では圧倒的に誰かと探す情報の方が多いという事です。
そして探す人が多ければ多い程情報の量は増えるという事。
情報量が多いのは時には良くも悪くもありますが、一人では見つけられなかった情報を見つけられる確率が格段と上がります。

そしてのそれら情報の中から必要な情報だけ抜き取り一番の最適な選択をする。
この「情報を探す・知る」という作業経験が今回の水害時に一番大変でした。
同時に自分が納得できるまでの情報量を知れれば、実際に行動するまでに要する時間はかからないという事を体験しました。

 

生まれた疑問

台風が過ぎた後、なぜこの「避難」に含まれる意味を知らなかったのだろう?と不思議に思って調べていると、
平成25年6月に改定した災害対策基本法への理解があいまいだったことでした。

背景には東日本大震災をはじめとする災害の教訓等を踏まえ、これまで小中学校の体育館や公民館といった公的な施設への避難が一般的であった避難行動を
災害対策基本法第 60 条の3では、

災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、避難のための立退きを行うことによりかえつて人の生命又は身体に危険が及ぶおそれがあると認めるときは、市町村長は、必要と認める地域の居住者等に対し、屋内での待避その他の屋内における避難のための安全確保に関する措置(以下「屋内での待避等の安全確保措置」という。)を指示することができる。

という法律になったのです。
つまり法が変わり、私達が子どもの頃に教わっていた一般的避難行動とは異なった知識や行動が必要になっていたのです。


法が変わって守れる命が増えることは良いことであるし、理解もできた。
しかし、防災意識として理解出来ていなかった。= 伝わっていなかった。

なぜすぐに理解することができなかったのだろうか。と色々と行政のサイトや資料を巡っていたのですが、原因の一つに「警戒レベルと避難行動」を可視化した資料にコミュニケーションデザインが不足しているのではないかと感じました。

資料を見ていると伝えたい情報が、行政向け、市町村向け、住民向けと3つのターゲットに同時に向けた資料だったので、理解するまでに疑問や時間を生じたのだと気づきました。

「避難勧告等に関するガイドライン」に基づき気象庁で作成された資料

「避難勧告等に関するガイドライン」に基づき気象庁で作成された資料

また、「避難勧告等に関するガイドライン」には、住民がとるべき行動、その行動を促す情報、行動をとる際の判断に参考となる情報をまとめた「警戒レベルと防災気象情報の関係」という表があったのですが、水害時にいち早く情報を収集することが困難だった経験から、自分たちが行動判断するために必要な情報が具体的にどこで取得できるのかという事が把握できると良いなと感じました。

警戒レベルと防災気象情報の関係 

警戒レベルと防災気象情報の関係 
警戒レベルに関するチラシ[表面] 警戒レベルに関するチラシ[裏面]
警戒レベルに関するチラシ


実際に資料をつくってみた

そこで、ターゲットを「洪水被害時」の「住民向け」にフォーカスして、災害時により伝わりやすい情報になるよう「住民が取るべき行動」と「行動判断できるまでの情報の収集」を警戒レベルに紐付けて具体的に可視化してみたものがこちらです。

警戒レベルに合わせた具体的な行動内容と情報収集のメディア例を示すことで、行政が住民へ届けたい情報と住民が行政から受信したい情報をスムーズにマッチング出来るのではないかと考えました。

警戒レベルに合わせた行動と必要な情報

洪水被害の場合の警戒レベルに合わせた行動と必要な情報

 

最後に

「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府(防災担当))が平成31年3月に改定され、住民は「自らの命は自らが守る」意識を持ち、自らの判断で避難行動をとるという心構えが今の時代には求められています。
今回行政の資料をもとにデザインをしてみましたが、決して元の作成資料を批判するものではなく、資料をつくってみて感じたことは、行政向けの情報や住民向けの情報、また様々な災害パターンに合わせたものとで、とても複雑な情報を伝えることの難しさ、大変さです。
今回、私の作ったものは「洪水被害時」の「住民向け」にフォーカスを絞ったものだったのでまだデザインしやすかったのですが、これが市町村の対応内容や、違う災害の場合の情報も入れてしまうと、一気に受け手に伝えたい情報が的確に伝わりづらい内容になっていたでしょう。。。

複雑な情報を目的やターゲット別に設計し、作る側は伝えたい期待値と同じように受け手側に伝えられるよう、受け手側の期待値を定量・定性的にリサーチし、必要な情報設計を見定めること。
コミュニケーションデザインに含まれる情報デザインの重要性やあり方はこのような形なのかもしれません。

 

クラウドワークスでも、仕事を依頼したいクライアント向けにデザインしたり、仕事を受けたいワーカー向けにデザインしたりと施策によってデザインのターゲットが変わっていきます。

誰に伝える必要があるのか、その人は何に課題を感じているのか、その伝え方で伝わるのか。共感してもらえるのか。
このような思考をデザイナー以外の周りのメンバーも含めこれからも精進していきたいなと感じられた経験でした。

クラウドワークスでは「"働く"を通して人々に笑顔を」をミッションとしており、社会意義のあるデザインを主体的に取り組むことができる環境です!

ご興味のある方、是非ご連絡お待ちしてます!

 

www.wantedly.com